shibuya pixel art

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departing ⚠️ by onion 2021 Grand Prix

PIXEL ART GRAVITY

「ピクセル」は、質量を持たない「光の画材」だ。だが、それらを用いて描かれる「ピクセルアート」には二つの「引力」が存在する。一つは、その手法がもつ「引力」。ドットを「打つ」という行為は単純な様で奥深く、作家の精神を整え落ち着かせ、作家同士を引き寄せあう不思議な力を持つ。もう一つは、低解像度なイメージが持つ「引力」。ハイレゾな時代だからこそ、シンプルかつ明確なフォーマットが頭の中で反復再生されやすく、受け手がそれぞれの文脈を入れ込むことで、その「引力」は増幅される。それが「ピクセルアート」の魔力と言えよう。

PIXEL ART AND ITS POTENTIAL

「ピクセルアート」いわゆる「ドット絵」は、1980年代に普及したコンピューターやゲームの機能的な制約のもと発展した低解像度の描写である。その表現技法は、1973年にビットマップ・ディスプレイを搭載した「Xerox Alto」というコンピュータを世に出した米パロアルト研究所で初めて取り上げられた。その後、1982年にタイトーから発売されたアーケードゲーム「スペースインベーダー」や1983年に任天堂から発売された家庭用ゲーム機「ファミリーコンピューター」など、数多くのゲームの映像技術(スプライト)として発展してきた。それらはコンピューターの処理能力に大きく左右され多くの制約の中で生み出された表現である。この表現技法は、機能的な制約から解放された現代においても、世界中で愛され続けている。

「ピクセルアート」の一般的な定義は「画像を構成する最小要素としてのドット(ピクセル)が視認できる程度の解像度で描かれた作品」または、「升目に色彩を人が意図的に配置し構成される画像」とされるが、いずれの定義も曖昧な部分を含んでいる。「ピクセルアート」は、その定義の曖昧さゆえ、ビットマップ画像の枠をこえ、主にゲーム文脈から派生し、イラストやアニメーション、刺繍やアクセサリーまで、ソーシャルメディアに日々投稿されることで大衆文化として定着してきた。さらに現在では「絵画」や「インスタレーション」といった「芸術」として鑑賞されるものへと変異し、昨今はNFT(Non-Fungible Token)市場の盛り上がりとともに多くの「ピクセルアート」が取引され、話題を集めている。

「シブヤピクセルアート」は、そんな「ピクセルアート」の芸術的な価値にスポットを当てた芸術祭で、「ピクセルアート」を文字通り「アート」として開放する。それは、毎年600作品以上のピクセルアートが集まる「ピクセルアートコンテスト」と、渋谷の街全体を展示会場にした特別展示やフェア、トークイベントで構成され、街全体でその魅力や可能性に迫ろうとする試みである。

2025年には「ピクセルアート」の展示、研究、保存を実装する「SHIBUYA PIXEL ART MUSEUM」を構想している。このような場所が、アーティストとファン、コレクターやギャラリー、企業や地域を有機的に繋げ、ともに循環しながらピクセルアート文化の発展と活性化につながる「プラットフォーム」になればと願う。「シブヤピクセルアート」が、様々な分野と接続し、「Bit Valley(ビットバレー)※」と呼ばれる渋谷を舞台としている所以はここにある。

※「Bit Valley」とは、東京・渋谷のインターネット関連のベンチャー企業が集中する周辺地域を指す呼称。アメリカの「シリコンバレー」になぞらえ、渋谷の地名から、(渋い:Bitter)と(谷:Valley)をかけて「Bit Valley」と命名された。この呼称は、1999年2月に渋谷周辺のベンチャー企業の経営者らが発表した「ビットバレー構想」に由来する。

HISTORY OF SHIBUYA PIXEL ART

2017年7月
ピクセルアートの試験的なイベントとして、渋谷LOFTや西武渋谷など、渋谷駅周辺13カ所で展開。期間中、SNSを活用した世界初のピクセルアートコンテストに200名以上が参加。ナノブロック®️で制作するハチ公の映像が13.4万回以上再生され話題に。東京新聞朝刊「東京発」にメインビジュアルが掲載される
2018年3月
第2回目となるシブヤピクセルアートコンテストを開催。コアなピクセルアーティストを中心に281作品が集まる
2018年6月
LINE株式会社とピクセルスタンプコンテストを開催。最優秀作品が「斜めドット」として5,715件リツイートされTwitter上で炎上。「ピクセルアートとは何か?」「ピクセルアートの定義とは一体何か?」と論争を巻き起こす
2018年7月
シブヤピクセルアート2018をキャットストリート沿いにて開催。発売40周年を迎えた「スペースインベーダー」とコラボし、観客動員数4,780名を記録。ピクセルアーティストZennyan氏の呼びかけにより急遽、座談会を実施。熱狂的な参加者との議論は4時間にも及ぶ
2019年2月
第3回目となるシブヤピクセルアートコンテストを開催。世界中から895作品が集まる。「Limited Pixel Art賞」「Analog Pixel Art賞」「Beyond Pixel Art賞」の部門賞が新たに設置され、7歳の最年少受賞者が誕生する
2019年6月
シブヤピクセルアートコンテストの受賞作品が、「Shibuya Pixel Art Graffitti」として渋谷駅周辺約100カ所に展開される
2019年9月
シブヤピクセルアート2019を渋谷キャストで開催。「現代の妖怪」をテーマにしたピクセルアートの企画展や「ピクセルアートとブロックチェーンの可能性」などをテーマにしたトークショーも実施。青空の下、ピクセルアートブースでの物販などに総勢26名のピクセルアーティストが参加し、観客動員23,000名を記録する
2019年11月
ヨーロッパ最大の公共放送「EURO NEWS」から取材を受ける。渋谷まちびらきや渋谷パルコのアートワークにピクセルアーティストが次々参画する
2020年5月
新型コロナウイルス感染拡大を受けた緊急事態宣言下で、第4回目のシブヤピクセルアートコンテストを開催。ピクセルアート界のレジェンド、eboyが初の外国人審査員となる。デビューわずか数ヶ月のピクセルアーティストmae氏のアニメーション作品が最優秀賞に輝く
2020年7月
NHK Eテレの「沼にハマってきいてみた」という番組で「ピクセルアート」が特集され、シブヤピクセルアートが地上波で初めて紹介される
2020年9月
シブヤピクセルアート2020を渋谷ヒカリエとバーチャル渋谷でオンライン&オフライン開催。コロナ禍の開催にも関わらず、受賞展示や表彰式、重田佑介氏とZennyan氏の特別展示「Temperature of Pixel」に総勢1,000名以上が来場する
2021年5月
シブヤピクセルアートは5周年を迎え、マスコットキャラクターとロゴを刷新。ロゴ・マスコットキャラクターは、2017年からこのイベントに参加いただいているピクセルアーティストのBAN-8KUがデザイン。キャラクターの名前は、渋谷のハチ公、8bit、BAN-8KUなどから縁起の良い「8」を借りて『Hachi(8)』と名付ける
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