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Article&Interview

2018/04/01

第一弾! スクウェア・エニックス 渋谷員子×ピクセルアーティスト Zennyan ドット絵対談 第一回

RPGの世界観

Zennyan

じゃあよろしくお願いします。
まずは前回のコンテストで賞を頂き、ありがとうございました。
絵を覚えていただけて本当に嬉しいです。

渋谷

静かな、シーンとした感じが印象的でしたね。

Zennyan

僕が一番最初にプレイしたRPGがファイナルファンタジー(以下、「FF」という)の6だったんですよ。

渋谷

(スーパーファミコンの最後に)ギリギリ間に合ったんですね!

Zennyan

FF6が初めてやったRPGだったというのもあって、僕の中のドット絵の原風景だったりして、特に世界観も寂しいというか少し暗いイメージがあって。

渋谷

若くて多感な頃にはちょっと憧れる世界観ですね。
FF6のキャラクター達は、それぞれ悲しみや切ないエピソードをもっていたりするのもささりますよね。

Zennyan

そうですね、ただ僕は小学生だったので怖かったんですよね。

渋谷

小学生だと怖いかもしれませんね。画面も暗いし。

Zennyan

あ、旅って辛いんだなと印象を受けて。

絵を描く者がとおる暗い世界

Zennyan

RPGって楽しい冒険みたいなものだと思っていたんですけど、少年漫画みたいな明るい雰囲気と違って少し寂しいし悲しいお話もいっぱいあるし世界も崩壊しちゃうし。
その影響が残っていたのか、あのコンテストに出した作品も滅びた渋谷みたいなものがあって、自分の中でFF6の世界観が残ってる部分だなと思いました。

渋谷

絵を描く者なら大半の人が一度は行く世界なんですよね。人類が滅びた後や荒廃した世界観とか、ハッピーじゃないものを描きたくなる時が。私も高校生の時はファンタジーやSFの世界に傾倒していて宇宙や時空や妖精やら難しい事ばかり考えては妄想していました。
魔列車(※1)は幽霊が出てくるし、ケフカ(※2)は奇妙でなんとなく気持ち悪かったでしょう。

Zennyan

あ、でもコミカルでした。ピエロみたいな感じで。
小学生だったのでそこまで闇に気づかなかったのかもしれないですね。

渋谷

ケフカはピュアな狂気みたいなものを全面的に出そうと思って。最初から狙って描きました。
今まで描いてきたFFのキャラクターで誰か一番気に入っているかと良く聞かれるのですが、いつもケフカと答えています。
かっこいいとか、かわいいキャラクターはとても描きやすいんですが、ケフカは精神的に複雑なキャラクターで、制御できない幼稚性もある。その奇妙な感じをドットで表現できないかなと考えて描きました。

Zennyan

ケフカのキャラクターって、どうやって作っていったんですか?

渋谷

まず最初に企画で世界観、シナリオを作り、登場人物のプロフィールを天野喜孝(※3)さんに渡します。名前とか年齢とか性格はこんな感じ。というオーダー表です。
当時、私は天野さんと直接やりとりしていて、アトリエに行ってイメージの打ち合わせをしたりしていました。そして完成した絵を見ながらドットを打っていきます。天野さんの作ったキャラクターをどういう風にドットに落とし込むかいろいろ考えながら。ケフカの動きはちょっとコミカルにしようと思って、びっくりしたときのポーズは「シェー」にしようと最初から決めてました(笑)。

Zennyan

「シェー」でしたね(笑)表情豊かでしたよね、動きとか。

渋谷

かわいいでしょ。

Zennyan

笑い声とかいまだに覚えています。

渋谷

あれは、サウンドの人たちのおかげです。印象的な「ヒャヒャヒャ!」は忘れられないですね。

Zennyan

そうですね。でも、子供の頃プレイしていてストーリーが基本的には寂しくて辛かったんですけど、ちびキャラとかコミカルな動きとかそういう演技が入ることでかなり救いになって、継続のモチベーションになってたなっていう記憶があります。

ドット絵の演技

渋谷

FF5から、手を振ったりうなづいたりという演技が入るようになって。FF6からはフィールドのキャラのサイズも大きくなり作業量が増えましたが、小さいながらも表情豊かになり、劇的にお話に入り込めるようになりました。お芝居をつけているのは企画の人なんですが、どういうシーンでうつむくとか、手を振るとかは私も想定しているんですけど、思いもしない組み合わせでお芝居させてくるのが面白かったです。デバッグ(※4)しながら、あれ!このポーズをこんなところで。。。という驚きが楽しかった。

Zennyan

動き自体は、描いた絵をどう使われるかは分からなかったんですね。
ドット絵のアニメーションや演技っていうのはすごく心に残ってて、今でもいいなって思うんですよ。
ドット絵なのでちょっと記号的で、完全に演じるって事は出来ないんですけど、人形劇的に喜ぶ時にちょっと飛び跳ねるとかそういう表現がすごくいいし、ストーリーが乗っかってくるとその動きだけで本当に楽しくなったりとか感動しちゃったり、うつむいてるとほんとかわいそうに見えたりとかするのが、なんか日本独特な感じもしたんです。能とかそういうものに近い。動きをすごく制限するじゃないですか舞とかもただ手がバタバタするだけで舞を表現していたりとか、それに近いような想像力を掻き立てる演技みたいなのがすごい好きです。

渋谷

いいですよね。
遊んでる人たちがそれぞれいろんなことを想像してくれれば良いと思っています。
ドット絵は簡単な動きしかしないけど、頭の中ですごいムービーが流れていてほしいですね。
最小の動きの中で、イメージを膨らませてくれたら嬉しい。

Zennyan

すごい心に残っています。キラキラする涙の表現とか。

渋谷

エフェクト使ってキラキラさせているんですよね。

Zennyan

ほんと工夫と知恵というか。

渋谷

演出が本当に上手でしたね。一回しか使わないイベントで絵の容量を増やすわけにいきませんから企画の人も相当考えていたと思います。

ゲームのドット絵の制約

Zennyan

FF6で印象的なのがあって、空がシンメトリーになっているとこがあって、あれは節約ですか?

渋谷

節約です。

Zennyan

シンメトリーって神秘的に見えるんですよね。宗教美術とかでもシンメトリーなものって多いので。
だからあの、異様な空っていうのがめちゃめちゃ覚えています。

渋谷

背景はパーツを作って、その組み合わせで違うかたちにはしてるんですけど、面積が大きい場合にはつなぎ目が目立ってしまいますね。でもそのつなぎ目もデザインしてしまうのはデザイナーの腕のみせどころじゃないかな。

Zennyan

そうだったんですね。それが逆にすごく心に残っています。

渋谷

それが容量がない時代の良さですよ。少ない容量で見栄えの良い絵を描く。デザイナーはやりくり上手でなければなりません(笑)。

 

 

※1)魔列車・・・『ファイナルファンタジーⅥ』に登場する乗り物、もしくはモンスター。
※2)ケフカ・・・『ファイナルファンタジーⅥ』に登場する敵キャラクター(ラスボス)。
※3)天野喜孝・・・画家、キャラクターデザイナー、イラストレーター、装幀家。『ファイナルファンタジー』シリーズのキャラクターデザインを担当し、舞台美術や衣装デザインも手がける。
※4)デバック・・・コンピュータプログラムや電気機器中のバグ・欠陥を発見および修正し、動作を仕様通りのものとするための作業。

FF DOT. -The Pixel Art of FINAL FANTASY- © 2018 SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved.
FINAL FANTASY V © 1992 SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved
FINAL FANTASY VI © 1994 SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved

  • 渋谷員子

    CGデザイナー/アートディレクター。 旧スクウェア時代から現在のスクウェア・エニックスに至るまで「ファイナルファンタジー」や「ロマンシングサ・ガ」シリーズなどキャラクタードット絵やデザインを手掛けてきたグラフィックデザイナー。「FFⅠ」のオープニングシーンなど、今なおプレイヤーの記憶に印象深く刻まれている多数のグラフィックを担当し、「ドットの匠」としてファンを魅了する。近年はアートディレクターとしてモバイル用タイトルのデザイン監修や、音楽CD「FINAL FANTASY TRIBUTE~THANKS~」のジャケットデザイン、ファイナルファンタジーの吹奏楽コンサート「BRA★BRA FINAL FANTASY BRASS de BRAVO」のメインビジュアルドット絵など、さまざまなシーンで活躍している。

  • Zennyan

    イラストレーター/ピクセルアーティスト/SPA2018最優秀者 1984年生まれ。千葉県出身。東京藝術大学美術研究科工芸専攻修了。日本の伝統工芸としての彫金を学んだ後、コンピューターゲームの制作過程や美観に魅せられ、ピクセルアート制作を開始。ゲームのキャラクターや背景、UI、アニメーション等の制作を行う傍ら、滑らかなデジタル表現の中に、アナログ絵画が持つ身体性や偶発性を取り込み、「ノイズ」や「グリッジ」などピクセルアートの新たな可能性を模索している。

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