2019
開催概要
「シブヤピクセルアート2019」は、立ち上げ当初から掲げる方針(街やストリートを舞台に・誰もが参加できる・実験の場)に立ち返り、参加されるアーティストとともにコンテストやイベントのあり方を見直しました。その中で、コンテストでは「個性」「社会性」「構成力」といった審査基準を定め、誰もが気軽に参加できるコンテストとして開催しました。 コンテストの優秀作品は6月に「Shibuya Pixel Art Graffiti」として渋谷の街中で展開され、9月には渋谷区が主催するソーシャルイノベーションウェークの開催に合わせ、「現代の妖怪」をテーマにしたピクセルアート展を展開しました。 イベントでは「ピクセルアートとブロックチェーンの可能性」をテーマにしたトークショーやピクセルアートやアーティストに触れ合える物販ブースを屋外に設け、総勢26名のピクセルアーティストが参加し、23,000名以上の来場者を記録しました。
SHIBUYA PIXEL ART 2019 WEBContest
3度目の開催となったピクセルアートコンテストは、「シブヤ」「時代」「人間」「妖怪」「お祭り」をテーマに、新たに「Limited Pixel Art賞」「Analog Pixel Art賞」「Beyond Pixel Art賞」の部門賞が設置され、国内外から総勢895作品(昨年比約3倍)の作品が集まりました。
審査員には、渋谷区観光協会の金山淳吾氏をはじめ、ファイナルファンタジーシリーズのアートディレクションを担当し、「ドット絵の匠」として広く知られる渋谷員子氏、NTTドコモでiモードや絵文字の企画・開発を行い「絵文字の生み親」としても知られる栗田穣崇氏、『美術手帖』編集長である岩渕貞哉氏、ドット絵のGIFアニメーションで世界中のファンを魅了する豊井祐太氏、そして、2018年の コンテストで最優秀者でピクセルアーティストのZennyan氏など「アート」 「ゲーム」 「カルチャー」の各分野でご活躍の方々をお招きしました。
審査手順は、応募規約に照らし合わせたスクリーニング→各審査員による一次審査→審査員全員が集まって評議する最終審査会の流れで行われた。そして、この回のコンテストは、「伝統芸能でいう『守破離』のように、ピクセルアートの定義やルールをどう打ち破っていくかということにチャレンジしているアーティストが多く、審査も大変難しかった」という審査員のコメントの通り、ジャンルの異なる多彩な作品がコンテストをより魅力的にした。
最優秀賞 / 「生まれ変わる町」
@m7kenji
109など渋谷のランドマークに頼らず、渋谷のどこにでもある風景を自分なりに観察し、解釈し、再構築して「渋谷」という街を表現している。色数が2色しかないなかで観るものを虜にする表現力、そして、見え方が均一になりがちな高密度のドット絵を、コントラストで変化をつけ、矢印などで視線を誘導する点など、技術力の高さが伺える。まるでクラブイベントのフライヤーのような印刷を前提とした作り方や壁画のようなざらついた加工も新鮮で、「渋谷らしさ」が随所に演出されている。何より、こちらが提示したテーマに対して作家が誠実に向き合い、創作する真剣さに審査員一同心奪われた。
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優秀賞
渋谷迷宮
@un_tako審査員のコメント
絵全体の構成がよく考えられていて、渋谷の地下の複雑さがよく表されている。具体性を持ちながら、位置関係も明確に分かり、感覚的でありながら街を俯瞰的に描いている。記憶の中にある渋谷のモチーフと、指でたどりながら楽しめる「迷路」が現在の渋谷の「迷宮」のイメージを見事に表現しており、観る者を夢中にさせる。この絵はゲーム的でもあり、渋谷をうろついてから疲れて寝ると、こういう夢を見る気がする。
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優秀賞
SHIBUYA BOYS SHIBUYA GIRLS
@yacoyon審査員のコメント
背景の暗い色に対して人物の鮮やかな色の対比がキレイで、都会の背景にある図形が人物にも絡まる部分など、イラストレーションやグラフィックデザイン的要素が高い次元で表現されており、社会性や「現代の都会の空気感」が自然と伝わってくる。装飾的な部分においても、渋谷のグラフィティのようなニュアンスが含まれており、全体の雰囲気で「渋谷らしさ」や「渋谷の風」みたいなものが表現されている。絵そのものの素直さがとてもよかった。
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優秀賞
澁谷点描祭2019
@ta2nb審査員のコメント
これぞドット絵の真骨頂と言えるようなとにかく力作でドット絵のお手本のような作品。「妖怪」、「祭り」、「人」というテーマを網羅しながら、誰が見てもワクワクする不思議でオリジナリティのある渋谷を描き上げている。ドット絵としてのクオリティも非常に高く、渋谷の街の過去現在未来が凝縮されているようだ。
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優秀賞
にじいろ渋谷まつり
@senboi49審査員のコメント
オリジナリティが高く「人が笑顔になる」ドット絵作品。ドットの描き方は粗削りの部分もあるが、エフェクトでうまくカバーしている。数字の1、2、3など、直線や斜めに固くなりがちなドットを、ゆるく、やわらかく、温かく表現しており、ドット絵の描き方に慣れてしまうとなかなか描けない個性的な作品。狐のお祭りのモチーフも個性的でよかった。
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優秀賞
しっぽのある女の子
@futinuro審査員のコメント
作品のストーリー性も高く、荒いドットがこの絵柄の素朴さ、暖かさにとてもマッチしている。ドット絵は直線的で寒い作品になりがちだが、この作品は水彩画のようなタッチと色使いで、柔らかく、温かく、作品の物語や雰囲気がよく伝わってくる。
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優秀賞
SHIBUYA WARRIOR
@casshern0724審査員のコメント
アイロンビーズで作られたモチーフが、雑踏の街並みに溶け込んでいて、社会的なメッセージもしっかりと伝わってくる。センター街の背景をぼかすことで、光がドットのように見える点も含め、不思議な展開が魅力的だった。街のいたるところに、こんなストーリーを散りばめたい。
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優秀賞
うごくしぶぴ☆
@waruusa69審査員のコメント
批評性に食い込んだ作品やストレートな萌えを避けるような作品が多い中、単純にポップでかわいいイラストレーションであり、ある意味もっとも渋谷らしい作品だと言える。ぐねぐねに曲がった信号や脚の間にいる柴犬など、個々の要素もシュルレアリズム的(超現実主義的)で可愛い。人によっては好き嫌いが分かれる部分があるかもしれないが、そういうことにあえてあまり配慮しない発想が、この作品の個性を生み出している。
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優秀賞
渋谷A面 / B面
@awaaa_uwaaa審査員のコメント
渋谷のランドマークに頼ることなく、共感できる渋谷らしさを工夫しながら表現している。標識の裏側のステッカーや落書きなど、この場所を探せば、見つけられるリアリティがその絵の魅力を高めている。また、信号が動き出すギミックやA面とB面の場面転換など、時間の移り変わりの中で、作家が描く心情に想いを馳せる。
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優秀賞
大火祭渋谷地獄
@hattori2000審査員のコメント
エネルギーに満ちた渋谷を妖怪の力を借りて独自の世界観で表現している。技術力もさることながら、このコミカルさが新しく、おどろかわいらしい。
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優秀賞
Yokai Festival
@pixeleyebat審査員のコメント
骸骨が印象的。日本伝来の妖怪など、作家自身の中にあるイメージを何かしらのオマージュとして昇華してよく描き込まれている。実際の金王八幡宮とは少し異なるものの、ドット絵として完成された作品。
This is a work that gives off a strong personality. We can see the artist’s efforts to tackle and express pixel art in their own way. The details drawn in the work seem to connect to create one story, much like a Native American textile. The unique patterns have a consistent rhythm that is a pleasure to the eye of the viewer.
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adidas Originals Flagship Store Tokyo特別賞
SHIBUYA BOYS SHIBUYA GIRLS
@yacoyon審査員のコメント
ストリートカルチャーの発信地、渋谷と原宿という地に相応しく、洗練されたファッションと移り行く都会のイメージをうまく表現している。 また背景にある夜景とその色調が、渋谷で佇む若者を「主役」として浮かび上がらせ、全体的なバランスと色づかいが、作家のセンスの高さを際立たせている。
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Limited Pixel Art賞
時代
@samoe_dou審査員のコメント
女子高生の流行りの変遷をひとりの人物で見事に表現し、誰もが渋谷の面影や時代の移り変わりを感じる。
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Limited Pixel Art賞
Scramble/Car
@wh1fIXWvNNOh1u6審査員のコメント
スクランブル交差点に行き交うさまざまな人や物を抽象化し、まるでモンドリアンの作品のように、シンプルで美しいアニメーションにまとめた作品。
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Limited Pixel Art賞
ハチ公のダンシングフィーバーナイト
@BrvFlame審査員のコメント
毎日カジュアルに楽しめるドット絵の手軽さ、敷居の低さなど、技術的にもシンプルなドット絵の魅力がすべての投稿に含まれている。
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Limited Pixel Art賞
泥田坊
@eri.6761審査員のコメント
はじめてパソコンで絵を描いたときの感動が垣間見え、Limited Pixel部門にも関わらず、常識にとらわれないことで制約から外れた自由な表現が魅力。7歳という年齢にも関わらず「泥田坊」というモチーフや色使いも絶妙。
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Analog Pixel Art賞
SHIBUYA WARRIOR
@casshern0724審査員のコメント
様々なカルチャーが「ストリート」から生まれる渋谷で、定着しつつある「ゴミ拾い」という文化を、「渋谷の戦士」として見事に表現している。アイロンビーズの清掃員は素朴でありながらも、強いメッセージが込められており、センター街で実際に撮られた背景に溶け込み一枚の絵として完成している。また、手前の地面の表情やアイロンビーズのテクスチャー、ネオンの滲みなど、表現が豊かで再現が難しいアナログの性質を活かし、「ストリート感」をも表現している。
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Beyond Pixel Art賞
untitled
@hin_since審査員のコメント
デジタル表現である「ピクセル」をジャギーの輪郭線として用い、そこにスプレーを組み合わせた落書き(グラフィティ)を絵画として再構築した作品。デジタルとアナログを行き来しながら、渋谷らしい「遊び心」や「ストリート感」が随所に表現されており、これまでのPixel Artの枠組みを超え、Shibuya Pixel Artの発展とPixel Artの新たな可能性を期待させる。
Event
「シブヤピクセルアート2019」は、東京ゲームショーの時期にあわせ、2019年9月14日(土)の前夜祭を皮切りに、9月15日(日)、9月16日(祝)の3日間開催。カフェやレストラン、ショップとコラボしながら、渋谷キャスト ガーデン&スペースを拠点に半径1㎞圏内の複数箇所にピクセルアートを展示しました。 渋谷キャストでは特別企画展やトークショー、スペシャルドリンクコラボなど「ピクセルアート」を観たり、触れたり、語ったり、飲んだりと、誰でも気軽に楽しめるイベントになりました。
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トークショー 「ピクセルアートを語りつくせ」
『ピクセル百景』と拡張するピクセルアートの未来
MC:室賀清徳 / gnck / BAN-8KU / m7kenji / Zennyan
『ピクセル百景』を出版することになった経緯や『これからのピクセルアート』について、ピクセルアーティストや評論家を交えたトークショー。ピクセルアートはなぜ今注目されているのか?ピクセルアートはなぜ可愛いのか?など、様々な文脈から自由に議論します。2019年9月16日(月・祝)14:00~15:00
会場:渋谷キャスト 階段付近
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トークショー「ピクセルアートを語りつくせ」
ピクセルアートとブロックチェーンの可能性
太田圭亮 / 高崎悠介 / Zerotaro / 田中達也 / MC:ひらいかずのり
容易に複製されやすいデジタルアートの原型を担保し、その所有権を流通させる技術として注目されるブロックチェーン。その技術は「ピクセルアート」とどのように関わり、アーティストや鑑賞者にどのような便益をもたらすのか?を話し合います。2019年9月16日(月・祝)16:00~17:00
会場:渋谷キャスト 階段付近
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トークショー「ピクセルアートを語りつくせ」
ピクセルアートミュージアムの要件
重田佑介 / EXCALIBUR /平松有吾 / MC:坂口元邦
80年代以降のソフト(コンテンツ)とハード(装置)の急速な変化に伴い、アートの姿も様変わりしている中で、これからのギャラリーやミュージアムの在り方を整理しながら、私たちが構想する「ピクセルアートミュージアム」を実現していくために、どのような要件が必要か?を話し合います。2019年9月16日(月・祝)18:00~19:00
会場:渋谷キャスト 階段付近
Artist
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EXCALIBUR
現代美術制作販売サークル
SHIBUYA PIXEL ART CONTEST 2018優秀者
東京⇔京都を拠点に活動する現代美術制作販売サークル。「ストリート・イーサネット・フィールド」という現実や仮想またはその重なりをテーマに、個人的な記憶を"日本神話"と交差しながら大衆的な記録に変換する美術で、すべての境界線を曖昧にする。2018年「Urban Art Fair | Paris 2018」(Le Carreau du Temple/パリ)、2019年「Tokyo Neo Pop」(DD/パリ)出展。2017年「12th TAGBOAT AWARD」(準グランプリ)、同年「京都国際映画祭2017」(優秀賞)、2018年「SHIBUYA PIXEL ART 2018」(優秀賞)受賞。
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奥田栄希
現代美術家
古いテレビゲームを題材に映像や、平面表現などを試みてきた奥田は、近年市販のゲーム機で動作するインタラクティブなゲーム作品の制作を行っている。その制作過程はゲームプログラムを作成し、基盤にハンダ付け、ひとつのカセットにパッケージするところまで全て手作業で行われる。市販のゲームの遊び的要素を排除した不毛なアート作品として注目を浴び「悲しいゲーム」のシリーズを現在も精力的に発表している。2011年、東京芸術大学美術研究科絵画-油画専攻修了。主な展覧会に2015年個展「悲しいゲーム」 (Takashi Somemiya Gallery)、2016年グループ展「ピクセルアウト」(ピクシブジンガロ)、2018年「山形ビエンナーレ2018」参加ほか、多数の展覧会に参加。